新しいEU医療機器規制(MDR)およびそのスイスの製造業者への影響について多くのことが取りざたされている。なぜなら、2020年5月26日時点では、おそらくスイスは「第三国」と見なされるからだ。しかし、スイスではこれまでのところ、MDR Annex XVIについてあまり報じられていない。このAnnex(付属書)は、医療機器と「類似」していると見なされる非医療目的の全製品をMDRの対象とするよう拡張するものだ。その対象となる製品に対する要件とは。
医療機器製造業者の業界では、2017年5月25日に発効し、2020年5月26日から適用されるEU医療機器規制2017/745(MDR)が、大きくその影を落としている。誰もが、市場への供給が中断なく継続できるよう、新しい規制を遵守するために最善を尽くしている。
スイスの医療機器メーカーが直面している課題は、EU内の競合他社の課題よりもさらに大きい。EUはスイスとの相互承認協定(MRA)をMDRに対ししばらく適用しないとみられているからだ。現在のところ、スイスの製造業者は「第三国」の製造業者とみなされているため、EU製造業者と同等にEU市場に供給することは許可されないようだ。すべてのスイスの製造業者は、製品をEUに輸出し続けることができるように(EU加盟国のいずれかに拠点を置く)承認代理人(authorized representative)を必要とする。この承認代理人は、MDRに定められた多くの重要な義務を負っているため、製造業者と同じ責任とリスクを負うことになる。その結果、彼らは保険に加入する必要があり、スイスの製造業者にとって追加的な大きな負担となる。
スイスの医療機器メーカーは、これまで医療機器として販売されてきた製品だけでなく、他の類似の製品もおそらく将来MDRの対象となり得ることに気づくだろう。しかし、医療機器を製造したことはなく、適応症を持たない製品のみを製造してきた製造業者が、今回医療機器として規制されることになった場合はどうするのか?
現在のところ、MDR Annex XVIに掲載されている以下の製品群は、2020年5月26日からMDRの対象となる。
・ 非処方カラーコンタクトレンズその他の目の中に入れて使用する製品
・ 解剖学的構造を変更する目的で、外科的侵襲的手段により人体に全体的または部分的に組み込むことを目的とした角状の移植用材(インプラント)その他の製品
・ 皮膚充填剤その他の物質、物質の組み合わせもしくは顔面、その他の皮膚または粘膜の充填に使用することを意図した製品
・ 脂肪組織を減少、除去または破壊するために使用される機器
・ レーザー、フラッシュ等を使用した脱毛機器およびその他の人体での使用を目的とした高強度の電磁放射(赤外線、可視光、紫外線など)照射機器
・ 脳内の神経細胞活動に変化を与えるために頭蓋骨を貫通する(非外科的に侵襲的な)電流、磁場または電磁場を当てる脳刺激用の機器
EU委員会は、このリストを修正する権限を有し、より多くの製品群をMDRの対象として提出できる。また、EU委員会がこれらの製品へのMDRの適用に関する何らかのガイダンスを発表することも予想される。しかし、これがいつになるかは誰にも分からない。唯一のメッセージは「報告書は近日公開予定。」である。EU委員会のガイダンスを待ちながら、関係する製造業者は、英国医薬品医療機器規制庁(MHRA)が最近公開した新医療機器規制(EU 2017/745)に基づく意図された医療目的のない製品のためのガイダンス(the Guidance for products without an intended medical purpose (Annex XVI) under the new Medical Device Regulation (EU 2017/745))を参考に作業を開始することができる。
MHRAのガイダンスは、これらの製品の製造業者、輸入業者および流通業者が、英国市場において、Annex XVIの自社への影響を理解し、どのように(MDR第10条、13条および14条と併せて読む)新しい規則にうまく準拠すべきか理解するのに役立つ。重要なことは、これらの製品の製造業者は、まだ承認されていない(ただし、2020年5月26日までに承認される予定の)共通規格への準拠を示さなければならないことだ。 本来はすでに、MDR Annex XVIに該当する製品を扱うすべての市場関係者が、新しい規制に精通し、2020年5月26日までに事業の突然の中断を回避するために必要なすべての措置を講じているべき時期だ。最後にもう一つ重要なことであるが、販売しようとする製品が第三者認証機関(notified body)による適合性評価を必要とするリスク・クラスに該当してしまう場合、このような義務を引き受けてくれるような希少な製造業者を探し始めなければならない。
本来はすでに、MDR Annex XVIに該当する製品を扱うすべての市場関係者が、新しい規制に精通し、2020年5月26日までに事業の突然の中断を回避するために必要なすべての措置を講じているべき時期だ。最後にもう一つ重要なことであるが、販売しようとする製品が第三者認証機関(notified body)による適合性評価を必要とするリスク・クラスに該当してしまう場合、このような義務を引き受けてくれるような希少な製造業者を探し始めなければならない。