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代理人理論によるFCPA有罪判決が覆される

Hoskins氏の背景
Hoskins氏の裁判は、DOJによるFCPAの拡大解釈に関して、近年大きな注目を集めてきた。実際、フランスで就業し、フランスの電力および輸送機器企業Alstom在職期間中一度も米国に足を踏み入れたことのない英国人であるHoskins氏が、2002年から2004年にかけて行ったとされる行為について、2013年に起訴された。
Hoskins氏は、DOJのAlstomの訴追に関連して起訴された。同社は、2014年に770百万米ドルでDOJと和解した。DOJの主張は、Hoskins氏が、金員の一部がインドネシアの政府職員へ影響を及ぼすことを意図したものであることを知ったうえで、インドネシアでのプロジェクトに関し、コンサルタントの選定およびコンサルタントへの支払いを承認したというものだ。Hoskins氏の行為は米国では行われず、同氏はAlstomの米国子会社APIで働いたことがないため、DOJは、共謀(コンスピラシー)、ほう助および教唆によってFCPA違反に対する外国人の訴追が、たとえ共謀等でなければFCPA違反主体とならない場合でも、可能になるという長年の理論に基づいて、同氏をFCPA違反の共謀の罪で起訴した。
第2巡回区控訴審裁判所は、2018年8月、FCPAの管轄権の拡大解釈を否定し、被疑者が正犯として犯罪を犯すことができない場合、共謀共同正犯または共犯者として有罪にすることはできないと判決した(*1)。しかし、さらに続けて、もし検察官が、Hoskins氏の行為が、(米国企業として、FCPA上の国内関係者である)APIの代理人としての行為であることを証明できる場合には、当該行為に対する訴追は、FCPAの不適切な域外適用を構成しないとしたのである。この結論を受け、DOJは、陪審員裁判も含め、Hoskins氏はAlstomで働いていたが、FCPAの管轄権の目的でAPIの代理人としても行動したというこの理論に依存した。
昨年秋、DOJが、Hoskins氏によるインドネシアでの賄賂の手配の支援はAPIの代理人としての行為であると示すことに成功した後、連邦陪審員は、FCPA違反とマネーロンダリングでHoskins氏を有罪と判決した。陪審員裁判で提示された証拠によると、Hoskins氏は、インドネシアの国民に電力供給関連サーヴィスを提供する118百万米ドルの契約を確保するための支援と引き換えに、インドネシア国会の重鎮議員および国営電力会社の社長を含むインドネシアの政府職員に対する賄賂の支払いについての共謀行為をした。Hoskins氏とその共謀共同正犯は当該プロジェクトを確保することに成功し、その後、インドネシアの政府職員に対して賄賂を提供する目的で2人のコンサルタントに金員を支払った。
Hoskins氏のFCPA無罪判決
Hoskinsは有罪判決に続いて、2019年12月に無罪または新たな陪審裁判の申し立てをした。2月26日水曜日、連邦陪審員はHoskins氏の申し立てを審理し、7つ全部のFCPA有罪判決を棄却した。Hoskins氏の行為は代理人としての行為であることを示すのに十分な支配をAPIがしたと検察官は証明していないというのがその理由である。 本裁判所の判決は、(上に描いた)Hoskins氏事件の経緯および被告のこのような申し立てにおける重い負担による無罪判決申し立て成功の希少性に照らして重要である。実際、検察官に最も有利な観点から証拠を検討して、検察官に有利にすべての合理的な判断を下した場合、もし合理的な陪審員のいずれかが、犯罪に必須の要素を合理的な疑いを超えて認定したならば、裁判官は有罪判決を維持しなければならない。
裁判所の高度に事実に基づく29頁の意見は、「代理人に必須の要素は、代理人の行動を支配する本人の権利である」ことに焦点を当てている。裁判所は、本人であるAPIはインドネシアでのより広範なプロジェクトについての支配を行使していたが、APIはHoskins氏そのものを支配していないため、代理人であることを証明するには不十分であると結論付けた。したがって、裁判所は、「APIの仕様に従ってコンサルタントを調達するHoskins氏の行為を中間的に支配する権利をAPIが有しているという証拠がないため、合理的な陪審員は、Hoskins氏がAPIの代理人であるということを合理的な疑いを超えて認定することができない。」と結論付けた。裁判所は、批判を込めて、APIにはHoskins氏を解雇し、配置換えをし、降格、または同氏の報酬に影響を与える権利がないことを強調し、「本人の支配権は、代理人の実績を評価し、代理人に指示を出し、代理人の権限を撤回することにより委任関係を解除することができる本人の権能を委任関係の期間中維持することを前提としている」と述べた。
Hoskinsの無罪判決は、DOJが控訴するかどうかは不明であるが、米国外の者に対するFCPAの域外適用の潜在的な制限を含む事件において検察官にとっては大きな後退だ。さらに、彼のマネーロンダリングの有罪判決を考えると、当該無罪判決はHoskins氏の刑に実質的な影響を与えないだろう。にもかかわらず、この決定は、DOJが今後代理人に関して事件を捜査し、訴追する方法に影響を与える。また、DOJの拡張的な管轄理論に反論する追加材料を現在有する被告にも影響を与える。
*1 United States v. Hoskins, 902 F.3d 69 (2d Cir. 2018)
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