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データ完全性:規制当局よりも早く異常を発見せよ
規制当局が貴社の製造施設を査察しているとする。突然、検査官はゴミ箱に向かって歩き始め、物を捨てるのではなく、逆に取り出し始めた。査察官は、ごみの中から、不良な試験結果を発見した。規制当局が貴社の重大なデータ完全性違反事例を発見した瞬間だ。こうした状況は、世界中の数多くの施設の査察中に幾度も発生している。企業経営者やライフサイエンス企業の経営者にとって、深刻な結果をもたらす可能性がある、悪夢の瞬間だ。
データ完全性とは、信頼性の高い正確なデータを意味する。国際的に、「ALCOA」原則が、データ完全性要件を示す一般的な手法となっている。ALCOAは、「帰属性(Attributable)、判読性(Legible)、同時記録性(Contemporaneously recorded)、原本性(Original or a true copy)、正確性(Accurate)」を意味する。実際の例としては、試験を実施する試験者が、正確な実測値を、自己の名前を付して、整然とはっきりと読み間違うことの無いように、計測したそのときに記録することだ。企業がしばしばトラブルに巻き込まれるのは、失敗した試験結果が破棄されて記録が残っていない場合や、手順が終了していないのに書類が事前に記入されている場合だ。
データ完全性は規制当局からますます重要視されている分野なので、企業は、自社の事業所内だけではなく、サプライヤー、特に原薬供給元についても、データ完全性の確保を真剣に考えなければならない。規制当局は、過去数年間の査察において査察官が広範にわたる違反を発見しているため、データ完全性に対し注意を払っている。製造データまたは分析データが信頼できない場合、規制当局は当該情報を有効に評価できず、製品の品質、安全性、有効性を保証できないこととなる。
これは特に、PIC/S(Pharmaceutical Inspection Cooperation Scheme)に加盟する規制当局に当てはまる。Swissmedic(スイス医薬品当局)は、PIC / Sのデータ完全性作業部会のメンバーであり、2016年にスイスおよび海外の検査官向けに「データ完全性の査察方法」に関するトレーニングを開催した。データ完全性、および製品のデータ完全性が危険にさらされるリスクは、GCP(Good Clinical Practice)査察対象企業の選択のためのSwissmedicの主要な基準となっている。
規制当局がデータ完全性違反を発見した場合、報道による打撃、承認申請の拒絶、輸入禁止措置等、企業にとって重大な結果になる可能性がある。さらに、各国規制当局はますます連携して活動しているため、一つの規制当局がデータ完全性違反を発見すると、別の規制当局からも悪い結果を導くことになる可能性がある。米国では、経営陣の刑事責任が問われる可能性もある。
したがって、データ完全性評価を実施して、企業のコンプライアンスを高めることを推奨する。経験豊富な社外第三者をデータ評価に使用することが最善の方法である。特定されたギャップに基づき、是正措置を実施する必要がある。問題の根本原因と範囲により、当該是正措置には、人事上の是正措置や、監査で明らかになったデータ完全性違反の規制当局への通知、または製品のリコールを含む場合がある。また、従業員がデータ完全性の意味、その重要性を理解し、問題を上司にエスカレーションすることをいとわない企業文化を育むことも非常に重要である。データは、従業員と同じだけの信頼性を持つ。
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Senior Advisorabalsiger@sidley.com +41 22 308 0051ジュネーブ*Admitted at the Swiss Bar but not registered at the Cantonal Attorney Register.