医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、10月9日に、「英国がEUから合意なく離脱する場合における医薬品安全監視(ファーマコビジランス)手続」に関する同庁の指針を更新しました。最新のバージョンについては、こちらをご参照下さい。「認可後措置(PAM)」及び「照会の結果の実施並びに定期的安全性最新報告(PSUR)、市販後安全性試験(PASS)、シグナル評価及び認可後措置(PAM)に関する手続」に関する2つのセクションの追加を含め、大幅な変更がいくつか行われました。このアップデートは、これらの変更の概要を説明するものです。このアップデートにおいて、「ブレクジット」とは、合意なきEU離脱をいいます。英国が合意を得てEUを離脱する場合には、現状が維持される実施期間が設定されると現時点では予想されます。
今回の更新では、4つの大きな変更がありました。
1.追加的な英国限定の措置:変更の多くは、ブレクジット後に欧州医薬品庁(EMA)のみならずMHRAにも伝達される必要がある情報に関係しています。特に、
- シグナル検出:データ源から得られるシグナル(EMAに提出される単独のシグナル通知及びEMAにより提起されるシグナルを含む。)は、MHRAがこれらのシグナルについて英国に係る決定を行うことができるよう、製造販売業者(MAH)がMHRAに対し通知しなければなりません。検出された安全性に関する問題は、3営業日以内にMHRAに対し通知しなければなりません。
- 定期的安全性最新報告(PSUR):MHRAは、英国で認可されている製品に関する全てのPSURを評価するとともに、リスク・ベネフィット評価に関連する英国特定の情報をブレクジット後に提出される全てのPSURに対して特定の添付資料として含めることを求めています。製造販売業者は、一般的には、EUのPSURリポジトリに提出済のPSURを再提出する必要はありませんが、MHRAが一定の場合に再提出を求めることがあります。MHRAは、EU評価の公表後まもなく、MHRAの評価の結果を公表します。
- 市販後安全性試験(PASS):英国市場における認可の条件とされているEUレベルにおいて義務付けられたカテゴリー1及びカテゴリー2の試験(義務付けられていないカテゴリー3以外)は、MHRAに対し提出すべきです。MHRAは、EU評価を考慮しつつも英国における臨床的観点を考慮して自身の評価を行う必要がある旨述べています。
2.リスク・マネジメント・プラン(RMP)及び認可後措置(PAM):
- リスク・マネジメント・プラン(RMP):認可された製品に関するRMPは、今後ともタイプII変更手続を通じてMHRAに提出すべきです。認可済のRMPの更新は、タイプIB手続を通じ提出すべきです。
- 認可後措置(PAM):PAMに関しては新たな指針が含まれています。全てのPAMは、ブレクジット後も有効であり、MHRAに提出されなければなりません。PAMについての現行の申請書を使用し、認可後のコミットメントとしてMHRAに提出すべきです。評価が完了していないもののあるPAMに関するデータがブレクジット前に提出済の場合、MHRAは、評価を完了します。製造販売業者のデータ評価が製品情報の更新の必要性を示す場合、これはタイプII変更申請を通じて提出されるべきです。
3.変更手続:指針に定める手続の結果として修正が必要となる場合における変更手続の実施に関しても、新たな指針が追加されました。シグナル評価、PSUR、PASS又はPAMに係る手続がブレクジット前に完了している一方で変更が必要にもかかわらず未提出の場合、結果は、EUについての手続(すなわち、タイプIA、タイプIB又はタイプII)と同じ手続で実施されます。英国は、変更が提出されたもののブレクジット前に英国において最終的に処理されなかった場合において、手続の結果に沿って変更を完了します。ブレクジット前にEUの決定がない場合、MHRAは、自身の評価を実行し、この結果を実施に関するMHRAの助言とともに公表します。英国の結果に従わねばならず、変更が必要な場合には、製造販売業者に対し必要な変更の種類に関する通知が行われます。
4.新たな提出ポータル:指針には、新たなMHRAゲートウェイ及び個別症例安全性報告(ICSR)提出のポータルへの言及も追加されました。ブレクジットの場合、医薬品安全監視に関する全ての文書のMHRAに対する提出においてこれらのポータルを使用することになるため、これらのポータルへの登録を可能な限り早期に行うべきです。また、MHRAは、ブレクジット後の使用のために、自身のPSUR提出ポータルを開発しました。PSURのMHRAに対する提出においては、これを使用すべきです。なお、英国における承認申請の申請書(CTD)の一部としてのPSURの提出又はブレクジット時におけるEMAからMHRAへの承認の移管手続におけるPSURの提出には使用できないことにご留意下さい。